西洋赤ミミズの歯周病菌に対する抗菌作用

驚きの研究結果!歯周病菌「ポルフィロモナス・ジンジバリス」に対するミミズエキスの抗菌作用

「ミミズと健康」をご覧の皆様、こんにちは!今回は、私たちの身近な存在でありながら、秘められた可能性を持つ「ミミズ」の歯周病に関する驚きの研究をご紹介します。

歯周病は、日本人の多くが悩む口腔内の疾患であり、その主な原因菌の一つに「ポルフィロモナス・ジンジバリス」という細菌が挙げられます。この細菌は、歯周ポケットに潜み、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが指摘されています。しかし、この厄介な細菌に対し、なんと「西洋赤ミミズ(ルンブルクスルベルス)エキス」が抗菌作用を持つ可能性が示されたのです!

今回ご紹介する論文では、この西洋赤ミミズエキスが、いかにポルフィロモナス・ジンジバリス菌の増殖を抑制するのかを詳しく検証しています。

歯周病とは?その原因と従来の治療法

歯周病は、歯茎や歯を支える骨が炎症を起こす病気で、進行すると歯を失う原因にもなります。

主な原因は、お口の中に潜む細菌。特にポルフィロモナス・ジンジバリスは、歯周病を悪化させる主要な菌として知られています。この菌は、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に深く入り込み、炎症を引き起こす物質を出し、免疫システムをかく乱してしまいます。

これまでの歯周病治療では、歯垢や歯石の除去(スケーリング、歯根面デブリードマン)が中心に行われてきました。しかし、従来の治療だけでは効果が不十分な場合もあり、抗生物質が補助的に使われることもあります。しかし、抗生物質の使いすぎは耐性菌を生み出すリスクもあるため、新たな治療法の開発が求められていました。

ミミズエキスの秘められた力:天然の抗菌成分「ルンブリシン-1

実は、ミミズは古くからアーユルヴェーダや漢方など、様々な伝統医学で利用されてきました。近年では、抗炎症作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用など、その多様な健康効果が科学的に注目されています。

そして、今回の研究で特に注目されたのが、西洋赤ミミズに含まれる「ルンブリシン-1」という抗菌ペプチド(AMP)です。ルンブリシン-1は、細菌や真菌に対して幅広い抗菌作用を持つことが示されており、ミミズが病原菌から身を守るための重要な成分と考えられています。

ルンブリシン-1は、細菌の細胞膜に作用することで、細菌の増殖を阻害すると考えられています。まるで細胞膜に穴を開けるように作用し、細菌の活動を停止させるのです。

西洋赤ミミズエキスがポルフィロモナス・ジンジバリスにどう作用するのか?

この研究では、実験室でポルフィロモナス・ジンジバリス菌を培養し、様々な濃度の西洋赤ミミズエキス(ECT)を加えて、その抗菌活性を調べました。具体的には、菌の増殖が抑制される範囲(阻害ゾーンの直径)を測定しました。

 研究方法のポイント

対象菌: 歯周病の主要な原因菌「ポルフィロモナス・ジンジバリス」

使用エキス: 西洋赤ミミズ(ルンブルクスルベルス)エキス

実験方法: 菌を培養した寒天プレートに、様々な濃度のミミズエキスを含ませたディスクを置き、菌の増殖が抑制される「阻害ゾーン」の直径を測定。

比較対象: エタノールのみの対照群

驚きの研究結果!

西洋赤ミミズエキスの歯周病菌抗菌作用研究の結果、西洋赤ミミズエキスは、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌の増殖に対して、明確な阻害作用を示すことが判明しました。

特に、50%濃度のミミズエキスが最も強い抗菌作用を示し、平均21.88ミリメートルもの阻害ゾーンを形成しました。これは、25%濃度(17.23ミリメートル)や12.5%濃度(15.50ミリメートル)と比較しても、非常に高い効果です。

一方で、6.25%濃度では、対照群と同じく阻害ゾーンがほとんど見られず、抗菌活性が低いことが示されました。このことから、ミミズエキスの抗菌作用は、その濃度に依存することが明らかになりました。

結論:歯周病治療の新たな可能性を開くミミズエキス

この研究は、西洋赤ミミズエキスが、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスに対して有効な抗菌作用を持つことを明確に示しました。特に、高濃度(50%)のエキスが最も効果的であることも明らかになりました。

これは、歯周病治療において、従来の治療法に加えて、ミミズエキスという天然由来の抗菌成分を活用できる可能性を示唆しています。抗生物質に頼りすぎることなく、より自然な形で歯周病と向き合える未来が、ミミズによって開かれるかもしれません。

今後のさらなる研究が待たれますが、「ミミズと健康」は、皆様の健康な生活をサポートするミミズの新たな可能性に注目していきます!

参考文献

I Gusti Agung Ayu Dharmawati,Tjokorda Gde Bagus Mahadewa,I Putu Eka Widyadharma3.Antibacterial Activity of Lumbricus Rubellus Earthworm Extract Against Porphyromonas Gingivalis as the Bacterial Cause of Periodontitis. Open Access Macedonian Journal of Medical Sciences. 2019 Mar 30; 7(6):1032-1036.

ミミズの歯周病菌に対する抗菌作用

執筆者 三砂雅則