ミミズはダーウィンが生涯をかけた研究テーマ
ミミズは、4億年以上前に地球上に出現し、現在3,000種類、日本だけでも約300種類が生存すると言われています。ダーウィンは進化論で有名なのですが、ミミズ研究の第一人者であり、1837年にロンドン地質学協会に「土壌形成について」という論文を発表しています。
その後もミミズの観察・研究を続け、ダーウィンが亡くなる前年の1881年には「ミミズの作用による肥沃土の形成およびミミズの習性の観察」という題名でミミズの書籍が出版されました。1)ダーウィンの生涯をかけた研究テーマが、まさかミミズだったとは、ちょっと意表をつかれますね。
肥沃な表土はミミズの消化酵素の力
地球上のあらゆる地表面は、適度の湿度さえあれば肥沃土に覆われています。この肥沃土は一般に黒っぽく、一様な細かさをもつ土の粒子で構成されていますが、肥沃土層の形成に、ミミズが大きな役割をはたしています。
ミミズの筋肉組織はよく発達していて、前進も後退もでき、しっぽの助けをかりて非常な早さで土のトンネル作り、その中にもぐりこむことができます。土を呑み込んで土の中に含まれている腐葉土、生肉、脂肪などの栄養物(有機物)を、体内に含まれる大量の消化酵素の働きによって分解し、その一部を栄養として吸収し、残りを土の糞塊として排泄します。
ミミズは、地表に細かい土を持ち上げるという大きな仕事をしながら、同時に体内の消化酵素で土の有機物を分解し、栄養豊富で細かい土を地表に一様に広げているのです。ミミズによって1年間に排出された土を一様にならしたとき形成される肥沃土層の厚さを計算すると、1年に5分の1インチ(約5㎜)の厚さの層を形成するそうです。
鋤(すき)は人類が発明したものの中で、最も古く、最も価値あるものの一つであると言われますが、ミミズは、人類が農耕を始める遥か昔から、豊富な栄養を土に与えながら、地球上の土地を耕し続けていたのですね。世界で初めてミミズ酵素ルンブルクスルベルスが強力に血管内の血栓を溶解することを発見した美原恒博士も、実はミミズが持つ有機物の分解作用からヒントを得ました。アジア地域で、ミミズを食用にしたり、漢方薬の原料として用いて来たのも、昔から人々は、ミミズが肥沃な土壌を作っていたことを観察していたからかもしれませんね。
参考文献
1)チャールズ・ダーウィン著/渡辺弘之訳.ミミズと土.平凡社ライブラリー.1994/6